高校が漫画学科を新設。卒業後はどうなのか?

 

定員割れが続いている熊本の県立高校が漫画学科を新設するということでニュースが出てきました。

 

もともと定員割れでこのままだとやっていけないということで起死回生を狙っているということ。漫画学科として本当にプロ漫画家を呼んでくるということで、決してその品質が劣るようなことはなく、新設学科といえどもかなり期待できるものにはなるのでしょう。

 

ただ、このニュースで気になるのがそこに通った人達の卒業後です。
一般の高校として漫画学科に通った人が卒業した後の進路をきちんと用意してあげることができるものなのでしょうか?自己責任にしてその後途方にくれる人が出てこないかということが心配になってしまいます。

 

 

漫画家は学校に行ってデビューするものではない

 

根本的な問題として漫画家は学校に通ってデビューして売れるというものではないというところがあります。編集部に持ち込んで通ればどんな人でもデビューすることができます。最近ではネットで独自に連載して、そこで火がついてデビューなんてものもあるでしょう。

 

いずれにしても学校で何かを教わってその通りに漫画を書いてデビューするというような道があるわけでもありません。

 

漫画は一般的な仕事のように仕事内容を覚えて、そのマニュアルのとおりに仕上げたら一人前になってお金がもらえるという仕事ではないという極めて常識的な話ですが、これを高校教育としてやることの課題はやはりあるのではと考えます。

 

絵が上手ければそれでデビューできるわけでもありませんし、ストーリーは学校で教えてなんとかなるようなものでもありません。ある意味アーティストのようなもので、その人の才能・感性が大きく影響してしまうため、答えのない世界をどう生きるのかという話になってしまいます。

 

 

卒業後の進路の課題

 

漫画学科の課題として思うのが進路の部分。卒業後全員が漫画家として成功するのは事実上不可能です。普通の仕事の場合、大成功はしなくてもどこかの会社で働いたりして生活していくことができたりするのですが、漫画の場合はそうはいかないという部分が大きいように思えます。

 

その学校に通う人は卒業後も漫画家になりたい、あるいは関連する仕事につきたいという人になるはずです。卒業後に働ける場所が全くない、無関係の会社しかないというのは非常につらいことになってしまいます。

 

完全に趣味として漫画を勉強するというのも悪い話ではありませんが、高校生という立場でその道に進み、その先が閉ざされてしまっているのは問題になりそうです。そこはどう考えているのかが気になるところです。

 

卒業後の進路が不安といっても、日本には美大や音大というものもあります。卒業後は全員が美術、音楽の仕事に就くことができるなんてことはあり得ないのですが、それでも社会的地位を保ち運営できているというところがあります。

 

漫画学科の場合、大学でもないというのが難しいところがありますが、何か上手いポジションを築くことはできないかというところですね。

 

 

日本文化として漫画を強化する方向はあり

 

漫画は一見ただの娯楽というようにも見えますが、実は立派な日本文化として根付いているという側面もあります。海外からの評価としては日本の漫画は非常に高いものがあります。

 

日本文化を育てるという意味で漫画を強化していくということは決して悪いことではありません。高校生の段階から漫画を学ぶ人を作り、そこから何か日本文化に役立てるようなことができればいいなとは思います。

 

ただ、漫画は黙っていても廃れるようなものではなく、今現在学校に関係なく次々と生まれているところもあり、この学校がどのようなポジションを取れるのかというところがあります。

 

日本文化を育てて海外で情報発信できる人を作るとしても、それが仕事として成り立たなければいけないですし、漫画はかなりその人の個性独自の才能によるもので、何か学んだから特別なものが生み出せるものではないというものでもあり、ここは難しいところです。

 

方向としては面白い試みではあると思うのですが、どういう人を育てられるかというところが課題ですね。

 

 

将来の道を築けるような制度があればいい

 

漫画学科ですが、卒業したときの進路の保証とまでは行かなくても、その生徒を受け入れる企業を用意するなどがあればいいと思います。

 

漫画だからといって卒業後に必ず漫画の仕事に就かなければいけないというわけではありません。法学部卒や経済学部卒が必ずしも法律・経済の仕事に就くわけではないのと同じように、そこで学ぶ内容はあくまで教養として、考え方、判断力、努力等を学びその力をもって一般の企業で働くという道もあればいいのかと思います。

 

もちろん一部の特別な才能が出たという人は漫画の道へ。そうでない人も関連企業であったり、無関係であっても受け入れてくる企業が出てくるような制度・社会が作られればいいですね。

 

芸術の世界は成功か失敗しかなく覚悟して入るのだからそれでいいというような意見もありました。確かにその通りではありますが、それを高校卒業後ではなく高校の中で行うということ、わずか15歳の子どもにその道を行くということを選ばせるということ。判断力等もまだ不完全な年齢で完全に漫画に人生をかけるというのもまた難しい面があるように思います。

 

上手く学校や社会がサポートをして、一般的な学校の勉強以外のことを学んだという人も受け入れられるような仕組みが必要なのではないでしょうか。


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